医療コラム 特集

乳がんの手術と乳房再建術

乳がんの手術と乳房再建術


平 広之 先生
東海大学医学部外科学系形成外科講師専門領域
形成外科

所属学会
日本形成外科学会 専門医
日本頭蓋顎顔面外科学会
日本皮膚外科

経歴
1987年 筑波大学医学専門学群卒業
1987年 東海大学医学部付属病院
2006年 東海大学医学部付属八王子病院 形成外科
2008年 東海大学医学部付属八王子病院 形成外科医長
2016年 RDクリニック新宿勤務

平 広之 先生

乳がんの手術

乳がんは近年日本でも増加傾向にあり若年者の罹患も多い疾患です。

基本となる局所治療は手術的にがんをきちんと取り除くことです。

現在乳がんの手術にはおおきくわけて2つの方法があります。

乳房温存術(部分切除)

がんとその周囲の乳腺だけを切除して、そのほかの部分を温存する方法です。

腫瘤が小さくがんのひろがりが狭い場合はこの方法が適しています。

「乳房円状部分切除術」と「乳房扇状部分切除術」の2つが代表的な方法です。

術前の画像検査の結果を検討して切除範囲を決定し、手術中に切除断端(切り口)の一部を顕微鏡で確認し断端にがん細胞がないことを確認して手術を終えます。

乳房温存術は、術前と変わらないような乳房の形を残せると思う方も多いかもしれませんが、

きずの位置や形は一人一人異なり、あまり目立たない場合もありますが、人によっては傷跡や変形が目立つ場合もあります。

またこの方法では術後に放射線治療を行うことが一般的です。

乳房切除術(全摘術)

この方法は胸の筋肉を残して乳房を皮膚乳輪乳頭を含めてすべて切除します。

乳房を全部切除するため、胸部に後日再発する可能性は少なくなりますが、

乳房の喪失による美容的外観の変化があります。

施設によっては症例に応じて皮膚乳輪乳頭を温存し乳腺全部を切除することが行われます。

この場合、術中に切除断端にがん細胞がないことを確認する必要があります。

乳房切除術(全摘術)では乳房再建術を行うことが多くなってきました。

乳房再建術

乳房再建術は乳房切除術と同時に行われること(一次再建術)が多いですが、切除術後の一連の治療が終わってから行うことも可能です(二次再建術)。

術後何年たっても可能で乳房再建について冷静に検討する時間を得ることができます。

現在ではおおきくわけて二つの方法に分類されます。

自家組織移植による再建術

自分の身体の一部を血流を保った状態で移動させる方法で代表的なものに腹直筋皮弁、広背筋皮弁などがあります。

そのほか臀部や大腿部を移植する場合もあります。

いずれの場合も自分の身体の一部を使用するため腹部や背部などに比較的長い傷跡を生じます。

しかし人工物を使わないため長期的な術後の挿入物の破損などの心配は不要で、自分の脂肪などの比較的自然な質感が最大のメリットです。

同時再建(一次再建)の場合は乳腺外科医と形成外科医のとの連携が不可欠で、術式の選択は施設によって異なる場合があります。

人工物による乳房再建術

わが国では2013年から」人工物による乳房再建術が」保険適応になりました。

保険適応になる方法や製品は厳密に規定されています。

まず乳房切除術後に大胸筋下にティッシュエキスパンダー(組織拡張器)を挿入します。

挿入後少しずつ生理食塩水を注入してふくらませ、最初の手術から4~6か月後に人工乳房(シリコンインプラント)に入れかえる手術を行う必要があります。

人工物による再建の利点は手術時間も短時間でほかの身体の部分に傷跡を作りません。

しかしながら人工乳房は身体にとっては異物のため感染がおこった場合取り出さないといけないという欠点があります。

また乳房の自然な下垂(たれる)の形態を再現することはできません。

また時間とともにシリコンインプラントの状態が変化し破損などにより交換や摘出が必要になる可能性があります。

近年、豊胸術や乳房再建術後に生じるまれな合併症として、乳房インプラント関連未分化大細胞リンパ腫(Breast Implant Associated-Anaplastic Large Cell Lymphoma(BIA-ALCL))という疾患が知られてきています。

この疾患はT細胞性のリンパ腫で、乳がんとは異なる悪性腫瘍です。

主に表面の性状がザラザラで表面積の大きいインプラント(マクロテクスチャードタイプ)を使用した症例で発生するリスクがほかのタイプより高い(約2200~3300人に1人)とされています。

日本でも2019年に1例の発症が報告されています。

このため現在乳房再建術ではこれ以外の、スムースタイプ(表面がつるつるの性状)やマイクロテクスチャードタイプ(表面の性状がザラザラで凹凸が浅く表面積の小さいタイプ)が認可され使用しています。

脂肪注入法による再建術の可能性

体のほかの部分:腹部や臀部、大腿など)から脂肪を吸引しその脂肪を用いて乳房増大術(豊胸術)を行う手技はかつてから盛んにおこなわれてきました。

近年乳がん術後患者さんにもこの方法が注目されています。

乳房切除術(全摘術)をこの方法だけで行うことは今のところ困難です。

しかし乳房温存術(乳房部分切除術)の術後陥凹変形や、乳房再建後の周囲の不足部分にボリュームを補う目的で行われ始めています。

注入された脂肪は100%生着するわけではなく、何回かに分けて注入されることが通常です。

2020年現在では健康保険の適応はありません。

注入法で用いる脂肪の種類

純脂肪

採取した脂肪から脂肪以外の不純物を排除したもの

コンデンスリッチ脂肪(CRF)

不純物だけでなく老化した脂肪細胞を除去したもの

脂肪幹細胞付加脂肪

脂肪細胞から脂肪由来幹細胞ASCを抽出し、これを純脂肪に加えたもの

培養脂肪幹細胞付加脂肪

脂肪から脂肪由来幹細胞ASCを抽出し、培養したのち、これを純脂肪に加えたもの。

脂肪由来幹細胞の数が最も多い。

吸引した脂肪を注入することによる乳房の再建術(増大術)は注入した脂肪の定着率が問題です。

通常の純脂肪の脂肪生着率は30~40%といわれています。

脂肪由来幹細胞ASCの数を増加させることによってその生着率をあげられることが期待されています。

また放射線治療後の部位での生着率の向上にも有用ではないかと期待されています。

参考:日本形成外科学会、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会ホームページ
横浜市立大学付属総合医療センター資料

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